Research

21世紀のポストゲノム解析によって、ヒトゲノムから大量のノンコーディングRNAが産生されていることが明らかになり、その新規機能に注目が集まっています。私たちの研究室では、lncRNAの中から細胞内構造体の骨格として細胞内の形作りを担っているノンコーディングRNAを発見してarchitectural RNA(arcRNA)と命名しました。arcRNAは相互作用タンパク質と共に、細胞内相分離を誘発することによって膜を持たない非膜性オルガネラの形成を主導しています。現在下記の3つのテーマに沿ってarcRNAの作用機構や生体機能の解明を目指しています。


1.ノンコーディングRNAの暗号解読

lncRNAは、そのRNA配列に刻まれたルールに基づいて機能しています。そのルールとは、タンパク質発現の遺伝暗号とは異なるノンコーディング配列の働きを規定する新規な遺伝暗号のはずです。私たちは、arcRNAをモデル系として、その機能を担う遺伝暗号の解読を目指しています。arcRNAは、特異的なRNA結合タンパク質を集約することによって相分離を誘発し非膜性オルガネラを形成します。そこでタンパク質がどのようなarcRNA配列を認識して結合し、どのように相分離を誘発してオルガネラ構造形成に至っているのかを、ゲノム編集、超解像イメージング、分子間相互作用解析、さらにはソフトマター物理学理論などを導入して研究しています。

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References
Sasaki et al., PNAS 2009; Naganuma et al., EMBO J. 2012; Kawaguchi et al., PNAS 2015; Hennig et al., J Cell Biol 2016; Yamazaki et al., Mol Cell 2018; Yamazaki et al., EMBO J 2021


2.ノンコーディングRNAの機能解析

ノンコーディングRNA には、クロマチン上で様々なエピジェネティック制御を担うもの、細胞内でのデコイとして遺伝子発現を制御しているものなどが知られています。我々が発見したarcRNAは非膜性オルガネラの骨格として、相分離を誘発することによって細胞内空間で隔離した液滴空間を作り出しています。こうして作り出された空間は、特定の生化学反応を効率よく行わせるための「るつぼ」、外界から特定の因子を係留する「スポンジ」、クロマチンの構造起点としての「ハブ」として働いています。そこで、私たちは、こうした機能におけるarcRNAの作用機構とその標的となる生体制御機構について研究しています。

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References
Hirose et al., Mol Biol Cell 2014; Ninomiya et al., EMBO J 2020


3.ノンコーディングRNAの探索

ヒトゲノムから数万種類ものノンコーディングRNAが産生されています。その中でarcRNAとして働くRNAはどのくらい存在するのかを明らかにするために、arcRNAの探索を行っています。私たちは、arcRNAは通常用いられているRNA抽出試薬に対して著しい難抽出性を示すことを見出し、その性質を示す難抽出性RNAを次世代シーケンス解析で探索することによって新しい機能性arcRNAを同定しようとしています。一方でarcRNAによって形成される非膜性オルガネラを探索するためにRNase処理感受性のオルガネラの探索も行っています。新たに同定されたarcRNAを比較することによってarcRNAに共通する特徴を明らかにすることを目指しています。

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References
Chujo et al., EMBO J 2017; Mannen et al., J Cell Biol 2016